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私のお薦めの一首・好きな漢詩
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この掛軸(写真)は、徳川幕府最後の老中であった松叟板倉勝静[かつきよ]公の書である。筆者が購入した唯一の掛軸である。 タテ・ヨコの寸法を計って紹介するのが習いであるかもしれないが、通常の床の間に長短よろしきを得る程のものである。
さて、この詩は唐の李紳[りしん](780~846)の詩である。
| 鋤禾日當午 | 禾[か]を鋤いて日 午に当たる (稲のねもとをすいて 日 午に当たる) |
| 汗滴禾下土 | 汗は滴る 禾土[かど]の土[ど] (稲のねもとのつち) |
| 誰知盤中飡 | 誰か知らん 盤中[ばんちゅう] の飡[そん](飯のこと) |
| 粒粒皆辛苦 | 粒粒 皆辛苦なるを |
[押韻]五言絶句。上声麌韻。
第一句の「午」も韻をふんでいる。
30年前のことである。その主人は、突然筆者が問う三島中州の話を打ち切って、一本の掛軸をとり出してきて、「これをお買いなさい。中州が仕えた殿様の直筆の掛軸ですよ。」と言うので主人のいう値で引き取った。「詩も書も殿様らしい」とだけは記憶に残っている。
当時、筆者が奉職した二松学舎大学が、間もなく創立百周年を迎えるに当たって『百年史』を編集することになった。
筆者もその編集の一部を担当することになり、創立者 三島中州の出身地である備中松山(現在岡山県高梁[たかはし]市)に調査出張を命ぜられたのである。
その主人とは当地の芳賀直次郎翁で、その折の調査出張は、「中州は早く東京にあらゆるものを移してしまったので、何かあるとすれば、あなたのいる二松学舎以外にはありませんよ。」という芳賀翁の言葉を復命として終了してしまった。
後日、本会顧問であった故石川濯堂先生にお見せしたところ、「殿様の字だね。」と評されたが、詩については、何とも言われなかった。
*文中、書き下し文、押韻については、山田勝美著
『中国名詩鑑賞辞典』(321頁/角川書店昭和53年刊)による。
| ☆著者略歴 | 本会常任理事 二松学舎大学中国文学科卒 同 名誉教授 1934年生まれ |


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