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岸上質軒[しっけん](1860~1907)は、ほぼ明治時代を生きた漢詩人である。万延元年、江戸浅草七軒町の宇都宮藩邸に生まれたが、維新に際し宇都宮に移住。幼少より学問を好み、一時期フランス語を学んでいる。司法省法学校在学中に健康を害し退学、以後は大蔵省に四年間勤務する傍ら長らく博文館で編集他に従事。
一方で漢詩界で活躍中に再び病を得て一時は回復したが、明治四十年不帰の客となった。享年四十八。
この本に掲載されている詩の数は、明治14年から20年までの203首と、同34四年から39年の118首であるが、これらの中の100首に就いては著者が注釈をされている。
全般的に見ると、旅や宴遊の詩、吟友との応酬の詩、感懐の詩の他、晩年の詩の中には当然のこと乍ら、日露戦争に関する詩も多い。
詩の形は絶句、律詩、古詩と各体にわたっているが、明治漢詩壇で埋もれている詩人の中の一人を紹介する好著である。では、紙面の制限の許す限り七言絶句のみ紹介する。
| 駐筇西望古函關 落日沈沈喚不還 |
| 獨對幽墳有餘感 英雄埋骨石橋山 |
結句の自注に「山上に佐奈田与一の墓あり」とある由、乃木大佐は後の乃木希典大将である。他にも乃木さんへの次韻あり。
| 一客都門過八年 春花秋月枉陶然 |
| 周游若遂平生志 海外靑山好墓田 |
| 雨後細風吹不寒 釣魚磯上日三竿 |
| 浪華凝紫潮華白 大海無邊春色闌 |
紹介出来なかったが、律詩や長い古詩にも魅力的な詩が多い。
終りに、この本の発行所他は次の通り。
発行所 (株)明徳出版社