連盟の活動報告
文化祭・漢詩大会の報告
|
| 盛夏風斜南海涯 | 盛夏[せいか] 風[かぜ]斜[なな]めなり 南海[なんかい]の涯[ほと]り |
| 今宵水畔景尤奇 | 今宵[こんしょう] 水畔[すいはん] 景[けい]尤[もっと]も奇[き]なり |
| 幾千蟹卵染波赤 | 幾千[いくせん]の蟹卵[かいらん] 波[なみ]を染[そ]めて赤[あか]く |
| 滿月在天潮适時 | 満月[まんげつ] 天[てん]に在[あ]り 潮[しお] 適[かな]ふ時[とき] |
遠いインド洋の離れ小島や、日本では薩摩半島から海上五十キロに浮ぶ黒島などで、満月のあとの大潮の夜、蟹が一斉に海辺に来て産卵するという話は、かねてから私の頭から離れない幻想的な光景でした。
「熟田津[にきたつ]に 舟のりせむと 月待てば 潮もかなひぬ いまは漕ぎ出でな」万葉集で額田王にも歌われたように、月の盈缺と海潮の関係というような大自然の息づかいは、まことに神秘的で壮大な詩そのものだと思います。
小さな蟹が本能的にそれに合わせて命の営みを行うという事、今回〝月〟という題を頂いてそのほんの一端でも描ければと思いました。
ただ私は実際にこの光景を見たことがありません。聞くところによれば、森に住んでいる山蟹が海岸に向ってぞろぞろ出てくる途中では、車に轢かれたり、人間に踏まれたり、又海岸では卵を狙った鳥たちが騒々しく飛びまわっているとか、かなりすさまじい光景も見られるという事です。
蟹にとっては大自然の中で命を繋いでいく上でのまことに厳しい、命がけの行動であるという事も忘れてはいけないと思いました。
この度の過分な榮誉と喜びは先づ、愛すべき横行公子、蟹と分ち合い、且つ感謝を捧げたいと思います。


Copyright © 2012 全日本漢詩連盟
All Rights Reserved.